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台湾のTSMC強すぎて草

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2030 半導体の地政学という本を読んだのでメモ

半導体とはなにかですが、本書の定義をそのまま引用すると

そもそも半導体とは物質の種類の名称である。 電気を通す金属などの物質が「良導体」。ゴムやプラスチックなど電気を通さないのが「不導体」。その中間にあり、半分だけ電気を通すから「半導体」と呼ばれる。

「半導体」を土台につくるチップには、いくつもの種類があり、機能や技術はかなり違う。大きな括りとしてはデータを記憶するメモリー、データを使って演算するロジック、ものを動かすパワー半導体などがあり、物質としての「半導体」が素材である以外は、まったく別物の製品と考えた方がいい。

一口に半導体と言っても用途ごとに専用の半導体があってそれぞれ別の製品だと。

現在の半導体の製造は TSMC が圧倒的な覇権

5G スマホなどに使われている最先端の CPU の半導体を作っているのが台湾の TSMC。 シェアは世界の半分以上、最先端の 5nm プロセスを中心に今後は 2nm,1nm のプロセスルールを使った半導体を作る計画があるという。 今の所、TSMC 以外に 5nm 以上の半導体を作れる企業はない。

ガチのバケモノ、モンスター企業ですな。 5nm はインテルも苦戦し、グローバルファウンドリー(GF)という AMD に半導体を供給していた企業も苦戦し、一度 AMD から契約を切られそうになったそう。

それでもすごいのにその先の 3nm は今年の 2022 後半、さらに 2nm が 2025 年に生産計画があると。 とととんでもねえ、世界中がついていけないスピード。

ちなみに、 日本がかつて覇権をとったとされるのはメモリ分野での半導体。 メモリ事業は売却されて現在の社名は「キオクシア」となっている。

アメリカに潰されたファーウェイ

ファーウェイといえば安くて性能もいいコスパ抜群の最新のスマホをどんどんだして日本でもかなりの人気でしたねえ。 あるときからなにやら騒がしくなってスマホ業界から締め出されて今はもう干されてしまったイメージです。

なにが起こったか書かれていたのでざっくりまとめると

  • アメリカの通信設備でもファーウェイ製のシェアがどんどん増える、シェアの半分を超えるレベルの勢いだったときに

  • 通信を握られるのは国家の運命を握らせるのと同じではないか。

  • 中国企業のファーウェイがどんどんアメリカの通信機器のシェアを握っている!

  • ファーウェイにアメリカの通信を握られるかも!

といった不安がでてきたんですねえ。

そんなときに他国から「ファーウェイ製品からスパイウェア疑惑」がでた。 それで、一気にファーウェイをアメリカから追い出す口実ができたもんで、国防を理由に物資制限! が、それでもファーウェイが諦めなかったので、アメリカはファーウェイの息の根を止めるために今度はファーウェイの子会社で半導体の設計を行っていたハイシリコンと半導体の製造を委託していた TSMC との関係をぶっ壊す!と決める。

そして、アメリカ製品を使わせない!とする制限をして TSMC はハイシリコンに半導体をつくってあげることができなくなった。

これでファーウェイはスマホの肝である最新の CPU が手に入らなくなって、撤退するしか道がなくなったと。

いやあアメリカ怖いなあ、本気で潰しにいったんすねえ。 ただこれはこれで副作用もあって、アメリカから中国に輸出したい企業もあるからそこを無視することはできない問題もでてきたようで。 もらうものだけもらってあげない!ってことができないのが貿易ってことですな。

アメリカはなんでここまでするかっていうと国を守ること以外に半導体の覇権をとりたいと。 半導体を制することは世界を制するみたいな考えってことですね。

製造は台湾の TSMC が覇権、ほかには露光という技術で覇権を撮っている会社がある。

露光の覇権、ASML の EUV

露光とはなんぞってことですが説明をそのまま引用しますと

シリコンウエハーの上に電子回路を焼きつける作業を「露光」という。フィルムに人物や風景を写して現像するひと昔前の銀塩カメラと同じ原理である。半導体の製造で最も基本的な工程だ。

とのことでして、電子回路を焼きつけるのが露光というんですね。

で、その露光技術で覇権を握ってるのがオランダの ASML のみ!

なにがそんなにすごいのかですが、EUV と呼ばれるものでして、

人間の目に見えるのは、光のごく一部にすぎない。虹の両側にある見えない領域が赤外線と紫外線で、その紫外線のなかでもさらに波長が短い光は「極端紫外線(EUV= Extreme Ultraviolet)」と呼ばれる。

めちゃくちゃ短い紫外線の波長を EUV というみたいです。 この EUV の本領は最先端の CPU で発揮されて、回路線幅が 5nm や 3nm と小さくなるにつれてこの EUV が必要不可欠なものだと。 ちなみにこの EUV の機械は中国に売れないみたいです、ファーウェイ規制のせいで。。

露光技術は日本のキャノンとニコンが支配していたみたいなんですけどねえ、EUV は作れなかったそうです。

アーム、アメリカ企業に売っちゃだめ?

次にアーム、(arm)について。

アームは半導体チップの設計に特化したファブレス企業である。

ファブレスは生産工場をもたないので設計専門てことですな。 apple やクアルコム、エヌビディアなどの企業がアームから基本回路のライセンスを買って、それぞれ独自にアレンジして使っていると。 apple だと iPhone や m1 の CPU ですね。

で、このアームはソフトバンクの孫正義さんが 2016 年に買収して、2020 年にアメリカのエヌビディアに売るわ、といったんだけどそれがすごい反対されたそうな。

アームは基本的な設計の部分だからライバル企業に機能制限したりしない?

そんなことするともっといい CPU とか作られなくなるよ?

と、たしかにそれは考えられますね。

また、アームの共同創設者もアメリカに売るのは最悪だ。 と、かなり批判的なかんじ。 アームはもともとイギリスの会社。

TSMC の技術・力を欲する国

アメリカは TSMC やサムスンに工場をうちに作らん?と誘って作らせていて、2024 年に TSMC の工場のアリゾナが始動。

日本は TSMC に声をかけ熊本に工場を作る。

が、半導体の使いみち、量ともに日本と比べアメリカがぶっちぎっているので TSMC にとってはアメリカに重要なことをさせるメリットがある。

ただ、TSMC も工場は作ってあげたけど作る半導体は最新のものじゃなく古いやつね。最新のはうち(台湾)で作るわ。というスタンス。

まあ、そりゃそうだわな。技術盗まれちゃうし。

ちなみにアメリカアリゾナでは 5nm を生産。 日本の熊本では 22 ~ 28nm と 12/16nm みたいです、主に自動車用。

けっこうな違いがでたような。今の主流が 5nm だと思うので。

日本はどうなの

半導体分野で日本はどうなのか少しまとめます。

技術は 100 年遅れてる、だから TSMC に頼るしかないとさらっと書いてあってびっくりしました。

今、TSMC と東大が共同研究してる。

ざっくりいうと、回路線幅の微細化は 2nm 1nm と進んでくだろうけど、壁がでてくるだろう。 そこで 3D の集積技術をうまいこと使えればもっといいものができるのでは?という構想があって東大と協力している節があるのだそう。 自動設計ツールみたいなものも作ろうとしてるけど世界中が作り始めてるしアメリカの国防高等研究計画局、通称 DARPA がガチってるから無理そうな。

NTT が光電融合の技術発見して今アメリカの企業含め研究を進めている段階でもしかしたら革命が起こせるレベルかもとのこと。

パワー半導体の技術が自動車で使われるかも。 電子回路を3次元に重ねる 3D チップが一番現実的に有望そうでしたけど実際のところどうなんだろうな。

アメリカ中国でも同じように 3D 化について研究してるのかは触れられていませんでした。

中国内で最新の半導体作れるようになったり技術をガンガンに生かして製品をつくれる状況になったらまた変わってくるんだろうなと。 とりあえず、TSMC すげーなあ。